【ベトナムの水パイプタバコ】トゥックラオ(Thuoc Lao)を吸えば、別の世界が見えてくる
2020.09.18

ハノイの街を歩けば、ローカルな喫茶店(路上のお茶屋も含む)で、長い竹筒を口にあてて煙を吹かしている庶民の姿を誰もが目にする事でしょう。
名前はベトナム語で「ラオの薬」と言いますが、決して身体に良い代物ではありません。ベトナムの喫煙者率は下がっているものの、50%の男性、5%の女性がタバコを吸うお国柄。そしてベトナムの代表タバコが、水パイプで吸うトゥックラオとなります。
ラオが吸える店
ハノイの庶民の街、Me Tri Ha(Big C Garden向かい側)には、通りに沿ってラオの吸える喫茶店が数軒あります。目印は、水パイプが店先のポリバケツに入っていること。たいていの店ではラオを無料で置いてあるため、ここでは一杯3000〜5000ドンの冷茶(Tra Da)を頼んでから、「Cho toi phut thuoc lao (ラオを吸わせてくれる?)」とでも言えば、快く一式を差し出してくれます。ラオ代は無料ですが、なかには自分専用のラオを持参するお客さんもいます。

吸い方にも作法がある
1)ラオを親指と人差し指でひと掴みします。2)パイプの先端にある吸口にラオを入れます。ご飯盛りの感じで軽い力で入れ込んで下さい。3)ライターまたはマッチでラオに火を付けながら、同時に竹筒の口から思いっきり吸い込みます。4)吸い込んだら、同じく竹筒の口からフッという感じで、先端に入ったラオを外に吹き出します。5)竹筒を水平にして、筒内に残った煙を思い切り吸います。吸い込む時は真正面からパイプに口を充てるのではなく、左なり右にパイプをずらして吸います。この時に「ピュルルルル」と音がします。6)最後は冷茶を飲みます。茶を飲むと効果がなくなります。これが一般的な作法です。




やはり身体に悪いのか
もちろん、身体に良いわけがありません。ラオの学術名はニコチアナ・ルスティカ(Nicotiana Rustrica)と言い、名前からもわかるようにニコチンがたっぷり。中南米にもあるようで、世界的に吸われている伝統的なタバコです。ニコチン依存症になるとWHOも警告するほどです。過度なニコチン摂取で身体が火照り、汗が噴き出し、血圧が上昇します。酷い時は身体が動かなくなり、座り込んでしまいます。学術書を開くと、有毒・中毒を指すトキシック(Toxics)と言う言葉が頻繁に出てくる代物です。
何故に吸うのか
効能のひとつに多幸感があります。他の麻薬や大麻も同じです。吸った後の数分間は「俺って幸せ」と言う感じですね。ただただ、ボーとした緩い安堵感に包まれます。庶民は忙しい仕事の合間に、ラオを吸ってひと時の幸せを味わっているのです。吸ったからと言って、覚醒剤のように凶暴になるわけではないので、ラオにまつわる事件は滅多に起こりません。
工場で働く工員さん、建築作業員、運転手などに常用者が多くいます。注意してみると、公共バスの運転手が脇に水パイプを置いていたりします。「プハァ〜」と一服つけた後に運転席に座るのですから、バスに乗るのが少し恐ろしい気がしますが。

意外と安いラオと水パイプ
よく売られているラオは一箱5000ドンから1万ドンです。ハノイの旧市街にラオ専門店があり、各種銘柄が販売されています。よく聞かれるのが「タンロン産(Thanh Long)」です。ラオ愛飲者は、好みのラオをそこで仕入れたりするのでしょう。
水パイプについては、雑貨屋の軒先で売られています。オートバイで水パイプを売り歩く業者もいます。値段は小さい竹筒が15000ドンくらいからです。龍などの彫り物や絵が書いてあったり鉄製とかは、50000ドン以上と見てください。

外人が吸うと人気者に
筆者自身の経験からすると、外人がラオを吸っていると、近くにいるベトナム人から話しかけられる事が多くなります。彼らの仲間意識を刺激するのでしょう。「お前はどこから来た」「ベトナムに家族はいるのか」「仕事は何をしているんだ」と立て続けに質問される他、紙巻きタバコをくれたりします。みんな、嬉しいのでしょう。身体に悪くてもベトナム文化ですから、それに親しんでいる外人を嫌いになるわけがありません。次回からは友達として、他のベトナム人にも紹介されます。これが縁で、筆者も何度かタダ飯、タダ酒をご頂戴しました。
最後になりますが、ラオ吸引は中毒になりますので、お勧めはいたしません。自己判断のもと、街で見かけたら、試してみては如何でしょうか。